田代安定の台東調査にみるタロコ

Abstract

田代安定は、台湾・台東調査を複数回行い、これらの調査報告書や調査日記類が「田代文庫」（台湾大学図書館特蔵室）に現存している。本報告では、田代による台東調査のうち、太魯閣に関わる報告書と調査日記を分析対象とし、明治期から大正期に実施されたタロコに関わる「原住民」調査の実態と政策形成の関連を明らかにしたい。本研究は、今回の国際シンポジウムのテーマおよび論壇のテーマである「タロコ戦役史に関する学術研究」のタロコ戦役史の「前史」と位置づけられるものと考える。田代によるタロコの「原住民」調査記録は、たとえば、「臺東殖民地豫預察」がよく知られているが、同報告書の基となった一次史料である「臺東殖民地豫預察巡回日誌」が現存している。また、「臺灣東部調査日記」（1896年）、「臺灣島諸標本説明」（1896年）、「臺東生蕃事項」（1896年11月）、「臺東廰報告其他各書類参考用」（1898年、1899年）などが関連する一次史料である。これらの分析はこれまでほとんどなされておらず、本報告において、詳細を紹介するとともに、これらの分析により、田代のタロコ調査を通して、台湾総督府がどのようにタロコをはじめ、台東の「原住民」の実態を把握し、実際の原住民統治の政策立案に活用したのか、その一端を明らかにする。さらに、可能であれば、こうした調査および政策が、その後の理蕃政策の一環としてのタロコ戦役につながる過程についても展望したい。

田代安定數次進行台灣、台東調查，這些調查報告書、調查日記類等資料現存於「田代文庫」（台灣大學圖書館特藏室）。本報告是以田代在台東調查當時，有關太魯閣的報告書與調查日記作為分析對象，試圖釐清從明治到大正時代所實施與太魯閣相關的「原住民」調查實際情況與政策形成之間的關聯。筆者認為本研究，在作為這次國際會議與論壇主題的「關於太魯閣戰役史的學術研究」上，可定位為太魯閣戰役史「前史」此一位置上。由田代做的太魯閣「原住民」調查記錄，例如「臺東殖民地豫預察」，雖為人所知，但作為上述報告書基礎的第一手史料「臺東殖民地豫預察巡回日誌」現仍留存著。又，「臺灣東部調査日記」（1896年）、「臺灣島諸標本説明」（1896年）、「臺東生蕃事項」（1896年11月）、「臺東廰報告其他各書類参考用」（1898年、1899年）等都是有關連的第一手史料。過去幾乎沒做過這些材料的分析，在本報告中，介紹其詳細內容的同時，也將根據分析這些材料，透過田代的太魯閣調查，闡明台灣總督府是如何以太魯閣為首，掌握台東「原住民」的實際情況，而活用在制訂實際的原住民統治政策上的一個面向。更進一步，可能的話，這樣的調查與政策，涉及後來作為理蕃政策一環、導致太魯閣戰役發生的過程，也要在本文中提及。