トランプ外交の展望と東アジア国際 秩序再編への可能性

Abstract

発足当初のトランプ政権では、 政治経験を持ち合わせず、 自国優 先主義と独特な排外主義をもつ人物が権力の中枢に近い。 彼らは各 省庁の政策プロフェッショナルとの対立を意に介さないばかりか、 秩序構築を念頭に置いた具体的な外交政策を構築できず、 従来の政 策を単純に否定している。さらに政権は政治的劣勢を、選挙同様に コアな支持者に訴えることで突破しようとしている。ISIS 対策や移 民政策、自国経済優先の通商政策が第一に重視されるが、 北朝鮮へ の 警 戒 も高ま って いる。 対中 関係も 中長 期的に 悪化 する要 素が 多 い。トランプ政権は、象徴的な分野には過度に関与し、全体的には 国際秩序に関心をもたないというように、安定した国際関与に失敗 するだろう。 それは冷戦終結後の国際秩序、そして世界各地域の秩 序を再編させるに十分な衝撃を持つ。短期的に見れば、トランプ氏 と安倍晋三首相の個人的関係に加え、ある種の国際的孤立感をトラン プ政権が深めるなかで、日本は英国とともに最後のパートナーとなり 得る。しかし、日米関係すら長期的に安定するとは言い切れない。